防災キャンプとサバイバルキャンプは違う。

更新日:9月5日

本当に災害時に役立つこと、とは
最近、災害時に役立つアウトドア・キャンプ指導のご依頼をいただくことがあります。
そこで、企画の参考にしようと、全国で行われている「防災キャンプ」や「防災教育」の事例をいろいろと見ています。工夫された面白い企画もたくさんあります。
その一方で、いろいろ見ているうちに、少し疑問に思うことも出てきました。
「これは本当に防災なのだろうか??」
火起こしや野草探しは、本当に「防災」?
例えば、火打ち石や摩擦を使って火を起こしたり、川の水をろ過したり、食べられる野草を探したりする体験。
もちろん、こうした技術は面白いです。キャンプやアウトドアの知識としても、とても価値があります。
ただ、私は熊本地震を経験しています。
実際の被災地で、火打ち石で火を起こしたり、川の水をろ過して飲んだり、野草を探して食べている人を私は見た経験がありません。
少なくとも私が経験した被災生活は、そういうものではありませんでした。
被災地は「無人島」ではありません
災害が起きても、そこには人がいます。
行政が動き、自衛隊が来て、ボランティアも入り、水や食料などの救援物資も運ばれてきます。
もちろん、災害の規模や地域によって状況は違います。
それでも、「被災したら何もない」という前提で考える必要はないと思うのです。
今の子どもたちなら、火打ち石よりも、マッチやライターを安全に扱う経験のほうが、よほど実用的かもしれません。
家庭ではIHクッキングヒーターが増え、マッチを見たことがない子どもだって珍しくありません。
だったら、実際に災害時に使う可能性のある道具を、どう安全に使うのかを体験してもらう。
そのほうが、防災教育として意味があるのではないでしょうか。
本当に必要なのは「生き延びる技術」より「暮らす技術」
災害時に必要なのは、何もない場所で生き延びるための特殊な技術だけではありません。
限られた水をどう節約するか。
カセットコンロで、どうやって簡単な食事を作るか。
段ボールなどを使って、どう眠るか。
お風呂に入れないとき、どう身体を清潔に保つか。
簡易トイレをどう使うか。
そして、避難所でどうやってプライベートな空間を確保するか。
こういうことは、決して派手ではありません。イベントの集客要素としては目を引きにくいかも知れません。
でも、実際に被災したときには、こうした「暮らし」の問題がとても切実になります。
「防災」なのか「サバイバル」なのか
もちろん、サバイバル技術を否定するつもりはありません。
自然の中で火を起こしたり、野草を見分けたりすることは、素晴らしい知識です。
ただ、それを教えたいのであれば、「サバイバル体験キャンプ」と呼べばいい。
それなら、とても面白い企画です。
でも、「防災キャンプ」と呼ぶのであれば、実際の被災生活に目を向けてほしいと思います。
知っている技術を教えることと、災害時に本当に必要なことを教えることは、同じではありません。
防災とは、「暮らし」を守ること
最後に、どうしても問いかけたいことがあります。
防災キャンプの指導者や企画者が想像している「被災地」は、本当に被災地でしょうか?
もしかすると、無人島や山の中でのサバイバル生活を、被災地のイメージと重ねてしまってはいないでしょうか。
どうも、アウトドアの知識や経験が豊富な指導者や企画者ほど、「サバイバルキャンプ」と「防災キャンプ」を混同してしまっているように思えてなりません。
限られた水や食料、使える道具や支援の中で、どうやって人間らしい暮らしを維持するか。
私は、そこにこそ「防災キャンプ」の意味があると思っています。

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